『セブンカラーズ』第一章:第四話(これから)

セブンカラーズ

 夜の路地の視線を一点に集めながら海翔達は帰宅した。母親とかち合ったら面倒だが、この時間はまだ仕事のはずなので家にはいないはずだ。というかそうであって欲しい。

 おそるおそるドアを開ける。家の中は真っ暗だ。どうやら母親はまだ帰宅していないようだ。

「どうぞ。あ、くつは脱いでね」

 どうぞと言った瞬間、くつのまま上がろうとしたクロウを制しながら海翔も家へ上がる。クロウは家へ上がる瞬間くつの様なものを消滅させ、裸足になった。

 海翔は直接2階の自分の部屋へクロウを案内した。適当なところにカバンを置き自分はベッドへ、クロウは椅子に腰掛ける。

「それで、君は一体何者なの?」

 シンプルに気になっていた事を聞く。正直さっきから新しい情報が波のように押し寄せてきていて既に頭がパンクしそうなのだ。出来るだけ早く情報を整理して頭をスッキリさせたい。

「まぁそう慌てるなよ。心配しなくとも全部説明してやる」

 クロウはまぁそう慌てるな。とでも言いたげに肩をすくめる。

「そうだな、まずは俺たちについて話すか。俺の名前はクロウ。そしてさっきの紫のはマカイズ。天使だ」

「天使? そんなの本当にいるなんて思いもしなかったよ」

 海翔が素直に感想を述べると、クロウは呆れ顔で言った。若干バカにしているようにも見える。

「だろうな。だが俺はこうしてここに存在している」

 確かに実際に目の前に存在しているのに、その存在が疑わしいなんて言ったら失礼だったかもしれない。

「そうだね、ごめん。それで何でそのマカイズに襲われていたの?」

「あいつとは偶然出会って、そのままなし崩し的に戦闘になったって感じだ。契約なんて面倒なことはしたくはなかったが、背に腹は代えられないって感じだな」

 クロウは悔しそうに言った。というか話が進めば進むほどさらに整理がつかなくなる。海翔がポカンとしていると、クロウが話を続ける。

「天使は全部で7人。ある時俺たちを生み出した神は言った。お前たちで殺し合って7枚のカードを集めた者を次の神にするってな。だから俺たちは殺し合うためにここに降りてきたんだ。神の間っていう退屈な空間からな」

「う、うん。それで契約ってのは?」

「俺たちは魔力を糧にしている。体も魔力でできているし、核であるカードも魔力によって稼働する。だが俺たちに魔力を生み出す術は無い。だから外部から魔力を入手する必要がある。そこで人間から魔力の供給を受けるための契約を結ぶんだ」

「う~ん。つまり、君たち天使は殺し合いをするために降りてきた。しかし戦うためには魔力が必要なんだけど、自分では生み出せないので体のいい補給係をゲットしたい。って感じかな」

「まぁそうだな」

 クロウは驚きに満ちた目を海翔へ向けた。様子を見る限り海翔は、初めて天使と出会ったはず。それなのにこの理解力の高さは、はっきり言って異常だ。

「ああ、それとあの黒い化け物は一体なんだったの?」

「あれは堕天使。俺たちを作る時に出た失敗作だ。まぁ詳しくは知らないんだがな」

 クロウは肩をすくめながら言った。

「大体こんなところか。他になにかあるか?」

「ええと、カードを7枚集めるって言ったけど、あの本の中には既に7枚以上入ってた気がするんだけど」

 海翔はクロウからもらった本を出現させ中身を確認した。銀色のカードが結構たくさん入っている。ちなみにこの本は「出ろ!」って思ったら出た。

「さっきも言ったが俺たちは、カードという核の周りを高濃度の魔力という体で覆う事でできている。核を守るための鎧を着こんでいる感じだな。
 そして俺たちと堕天使とでは、カードのランクが違う。分かりやすくゴールドと、シルバーってな。俺が集めてるのはゴールドの方だ」

「そっか。積んでいるエンジンが違うって感じだね」

 クロウは若干ポカンとした後「よく分からんが、たぶんそうだ」と頷いた。天使って何でも知っているイメージがあったけど、現代の知識は案外乏しいのかもしれない。

「それで、僕はこれからどうしたらいいのかな」

「別に大したことはしなくていい。必要な時にこっちに武器を寄こしてくれりゃ文句は無い」

「分かった」と海翔は頷いた。それに満足したのか、クロウはおもむろに立ち上がり部屋の出口の方へ歩き出す。

「隣の部屋、空いてるな。暫くそこ使うから、よろしくな」

 クロウはそう言って部屋を出る。あまりにも自然な流れで部屋を占領されそうになったので、危うく見逃すところだった。海翔は慌ててクロウを引き留めた。

「ちょ、ちょっと待って! 部屋を使うのは構わないけど母さんにどう説明すればいいのさ。いくらなんでも今日から天使の同居人が増えましたなんて言えないよ」

「それくらいはどうにかしてやるさ。あ、明日の夜は空けとけよ」

「じゃあな」クロウはそう言い残して部屋を出た。色々心配は残るが、大丈夫と言うのなら大丈夫なのだろう。

 というか疲れた。ベッドに背中から倒れこむ。今日は色々な事が起こった。学祭の準備に、詩織との約束、危うく死にかけたり、クロウと契約したり……。

 昔から色々あったが、こんなに濃い一日を過ごしたのは初めてだ。今日のことを思い出していると、強烈な眠気が襲ってくる。

 普段なら根性で眠気をごまかし家事をしてから寝るのだが、今日はどうも抑えられそうにない。意識が遠のいていく。

 まぶたを閉じると、海翔は眠りに落ちていた。

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