『セブンカラーズ』プロローグ(天使)

セブンカラーズ

 白。白以外の色が消えてしまったのではと錯覚してしまいそうな程、どこまでも白い空間である。ここは神の間。神がいるからそう呼ばれるのか。神がそう呼べと命令したからそうなのか、今や誰も分かりはしないが、ここは神の間なのである。

 少しの凹凸も存在しない真っ白の床から伸びる壁は、真っすぐ垂直に伸びているようにも見えるが、視点を変えれば外側に向かって湾曲しているようにも見える。

 もしもこの空間を外側から見れば平行四辺形の豆腐のような形に見えるかもしれないし、サッカーボールの様な球形に見えるかもしれない。ただ、ドアのような物が一切存在しないこの空間に外という概念があるかは甚だ疑問ではある。

 この不思議な空間の中央。周囲よりも1段下がった所に中央がぽっかりと空いている円形のテーブルが置かれている。そのテーブルを囲むように椅子が8つ。その内7つの椅子にはこの世のものとは思えない程、美しい顔を持った人間が座っている。

 いや、正確には彼らは人間ではない。なぜならその背中には身の丈程の美しい翼が生えていたからだ。この様な存在を一般的に天使と言うのだろう。7つの椅子には7人の天使たちが座っていた。

 そしてもう1つ。煌びやかな宝石が散りばめられた巨大な椅子が壁に沿うように位置していた。その白を基調にしながらも宝石が散りばめられた椅子からは少しの下品さも感じさせず、むしろ高貴な気品を漂わせていた。

 天使たちが座っていた椅子は飾り気のない簡素なものだったので、その特別な椅子に座している人物が他とは一線を画すことはその見た目からも明らかである。

 その椅子には1人の男が座っている。その男は白いローブを纏っており、腰のあたりまで達するその美しいブロンドの髪は見る者を男女関わらずたちまち虜にしてしまうだろう。長い前髪が表情を隠してしまっているが、その男はどこか笑っているようにもうかがえる。その男の背中にも美しく白い羽が存在感をはなっていた。

 その男はこの空間の中でも一際大きな存在感をはなっていた。神が存在するならばこういう男の事を言うのだと否応にも理解させられる男だった。

 1人の神と7人の天使。ここが神の間と呼ばれるのも説得力がある。

 神は眼下に位置する7人の天使をゆっくりと見渡したのち、ゆっくりと口を開いた。

「悠久の時を生きた私にもいよいよ終わりの時が近づいてきている。しかし創造主である神がこの世界から消えてしまえば、たちまちこの世界は荒廃してしまうことだろう。これまで何代もの神が管理してきたこの世界。私の代で終わらせる訳にはいかない。

 私より生まれし7人の子供達よ、私は考えた。世界の管理者というこの重責を担うに値する者は一体どのような存在なのか。

 誰よりも優しい者か、否。では誰よりも口が達者な者か、否。誰よりも経験を重ねている者か、否。

 世界の管理者、私の後継者たる者に最もふさわしい者、それは誰よりも強い者である。強い者は自己犠牲者を制し、話術に秀でし者を制し、経験者を制す。

 この世界を制すのは真の強者である。では真の強者は如何にして決めるべきか。その解は単純。我が子達よ、下界に降りるがいい。最後の1人になったその時、再び天への門が開かれるであろう」

 終わりの時が近づいているとは微塵も感じさせない、ハッキリとした口調で神は語った。

 彼の子、7人の天使たちは神の言葉が終わったのを合図に順番に消えていった。

 7人の天使が消え、この空間には神ただ1人が残された。神は左手に出現させた荘厳な書物に目を落とし、口元を綻ばせた。

「殺し合え我が子達よ、最後の1人になるまでな。私の後継者たる者はたった1人で十分なのだから」

 天使がいなくなった白の空間に神の声が響く。神はこれから起こる事が楽しみでたまらないといった様子でページをめくった。

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